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隣の別カップルは、本をついたてのようにして、顔を近づけあっている。
「はあ」
私はため息をついて、場所を変えることにした。
中庭ならば、誰もいないだろうから。暗くなったらおとなしく帰ろう。
そう思いながら立ち上がると、入り口からやってくる人影があった。
木陰でこそこそと魔法を試していたあの男子学生だ。
特に言葉を交わすこともなくすれ違ったら、背後から小さく「あっ」という声がした。
けれど私は振り返らないよ。
彼の声よりも、この本の続きが気になるんだから。
◇◇◇
翌日の放課後。
今日は人が少なかった。
ラッキーだなと思いつつ、日課をこなすため、目当ての本棚へ向かった。
そしたら、例の男子学生が本を眺めて難しい顔をしていた。
しかも、私が好きな作家さんの本が陳列してある真ん前で。
内心では嘆息するけど、日課を怠ることはできない。
少しだけ身の危険を感じるけれど、図書館で何かをすることはないだろう。
私は男子が癖の隣に立って、新しい本がないか探した。
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