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すると、隣から手が伸びて、とある本を抜き出した。
……短編集!?
彼が手に取ったのはお気に入りの作家さんの短編集だった。
しかも、昨日まではこの書棚になかった、新入荷の本。
彼に近づいていく本を目で追いながら、思わず声を出してしまった。
「あー」
毎日通い詰めて、ようやっと見つけたというのに、無念の思いがあふれてしまった。
当然ながら、私の声はしっかりと届いているわけで、彼はぎょっとした表情で私と本を見比べていた。
「もしかして……マルジン先生のファン?」
「はい」
「へ、へえー。僕もファンなんだ」
「……はあ」
私の感性がねじ曲がっているだけかもしれないけれど、彼の言葉一つ一つが、当てこすりのようで腹立たしかった。
今日はもう図書館にはいられない。
家に帰って、部屋の隅で丸まりながら、マルジン先生の長編作品を読みふけるんだ。
もう8周しているけど、読みふけるんだ。
そう考えていると、彼は意外過ぎる行動をして、私の度肝を抜いた。
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