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「父さん! 何とか言ってやってくれよ! 二人とも僕を無視するんだよ!」
「涼花、母さん……」
父は僕の言葉に応えてくれた。一家の主として、母と妹の不義理を注意してくれるようだ。
「食べよう。今日は涼介の好きだったクリームシチューだ。冷めたら勿体ないよ」
父の言葉は、僕が想定していたものとはかけ離れていた。
「……何だよそれ? 好きだったって何だよ? 今でもシチューは大好きだよ!」
「…………」
「父さんまで僕を無視するのかよ! 僕が一体何をしたって言うんだよ?」
家族の態度に、僕は全く食事が進まなかった。そんな僕にお構いなしといった様子で、三人は食事を続けていた。
「……ごちそうさまでした」
重い空気の中、妹が食後の挨拶をした。反抗期でも、親の躾が随所に伺える。元々は優しい子で、僕はそんな妹を溺愛していた。
僕以外の三人が食事を終えると、母はまだ料理が残っている僕の食器まで下げ始めた。
「ちょっと、母さん! 僕まだ食べ終わってないよ。何で食器を下げるの?」
「……きっと、涼介はもう食べ終わってるわよね? 家族の中で一番食べるのが早い子だったから」
「……私が食べ終わってるぐらいだから、お兄ちゃんならとっくの前に食べ終わってるよ、きっと」
「二人とも、一体何言ってるんだよ?」
僕は、母と妹が何を言っているのか、さっぱり理解ができなかった。
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