1:大好きなお姉さまが婚約破棄されました

1/9
前へ
/54ページ
次へ

1:大好きなお姉さまが婚約破棄されました

「エレノア・ケアード。この場をもって、君との婚約は破棄させてもらう」  アッシュクロフ王立魔法学園の大ホールでは、華々しく卒業パーティーが開かれていた。  天井の中央から吊り下げられているシャンデリアが明々と輝いているのも、魔法によるもの。  魔法を使うための力――魔力は親から子へと引き継がれるが、誰しもその魔力を備えているものではない。魔力を持ち、魔法が使える者は貴族に限られていた。そのためその貴族を、魔法貴族と呼ぶこともある。  風火地水の四属性が魔法の基本属性とされ、生まれた家柄によってどの属性が扱えるか決まってくる。基本は一人一属性だが、まれに両親の双方の属性を受け継ぎ、二属性の魔法を扱える者もいた。  だから結婚相手には、自分と異なる属性魔法を使える者を望むことが多い。  目の前で展開されている婚約破棄の茶番劇だが、その破棄をつきつけられたエレノアは、風属性の魔法を使う公爵令嬢だ。  そして声たかだかに婚約破棄を宣言したのは、アッシュクロフ王国の王太子であるジェラルド。彼本人は、土魔法の使い手である。だからこそ、エレノアを婚約者にと望んだはず。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加