3:大好きなお姉さまとひきこもります

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 その声は小鳥のさえずりのようなもので、セシリアの側にいた者たちにしか聞こえない。だけどしっかりと父親とシオンの耳には届いたらしく、父親は唇の前に人差し指を当て、必死に「しーっ」としている。  だからセシリアも慌てて口をつぐむ。 「ようこそいらっしゃいました、シング公爵。わたくしが領主代理、エレノア・ケアードです」  その場の空気を一気に変えたのは、エレノアの優雅な挨拶だ。 「では、早速、お部屋に案内いたします」  彼らをエレノアにまかせて、セシリアはそろそろと父親にくっついた。 「お父さま、ごめんなさい」 「いや、問題ない。シオン殿下の髪色は珍しいから、それでわかったということにしておこう。勤勉なセシリア」  どうやら父親は、シオンがロックウェル王国の第二王子であるのを知っているようだった。外交を務めていたのだから、近隣諸国の王族の顔はすべて覚えているのではないだろうかと、思えてしまう。  シオンが身分を隠してフェルトンの街を訪れているのは、何か理由があるのだろうか。  コンスタッドたちを部屋へと案内したセシリアが戻ってきた。 「エレノア、お疲れ様。領主代理も板についてきたな」
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