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シオンがそう言うと、グラスの中の水を見つめている。なんとなく、気まずい空気が流れた。
その流れを断ち切ったのコンスタッドだ。
「そうそう、ケアード公爵。国に戻ったら、正式に申し込みをしてもよろしいでしょうか?」
彼はワイングラスを手にし、緊張をほぐすかのようにコクリと一口飲んだ。
「何をだろうか?」
父親の声が普段よりも低く聞こえた。
「エレノア嬢に結婚の申し込みを」
シンとその場が静まり返る。エレノアは恥ずかしそうに顔を伏せ、カトラリーを持つ手を動かす。
「なるほど。申し込むのは自由だ。その答えがどうなるかはわからないがな」
「では、そのお言葉に甘えさせていただきます」
やはり緊張していたのだろう。コンスタッドは残りのワインを一気に飲み干した。
「ダメです」
セシリアの甲高い声が響いた。
「ダメです。お姉さまは結婚してはダメです。お姉さま、シング公爵と結婚したらロックウェルに行ってしまうのでしょう? いやです。セシリア、寂しいです」
「そういうことのようだ、シング公爵」
なぜか父親が勝ち誇った笑みを浮かべている。
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