ニチアサよ、祝福あれ。

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 そんなキャッキャウフフな日々が過ぎ、すわセーターかという肌寒い季節に差し掛かった、今日は土曜日。 『よっしゃ!今日こそ誘えよー!ボン!男は度胸だぜ!』 『直接いうのが恥ずかしければ、お手紙にしたためてみるのも、ひとつのハレルヤですよ!』  もうなんというかシンプルに邪魔である。己が役目について一度よく考えて欲しい。 『おいオマエ馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!ボンの書く字は人類にはまだ早い!読めねぇんだから伝わらねぇだろ!』 『あー!ああー!貴女一体なんという事を!ボン!この悪魔の甘言には決して耳を傾けてはなりません!ボンの書く字は過分に元気があり余っちゃってるだけです!とても素直で好ましいと私は感じます!誰恥じる事はありません!正確に情報を伝達するためにも口頭でお誘いするのです!』  未だかつてこんなに意見が合うプレゼンター達はなかった。仕事が楽しそうでいいね汝等は。 『だってだってだってだぜ!?』 『ええ!今日の2年生はボンと少女の2人のみ!』 『悪魔の采配だ!』 『天の御加護です!』  こいつ等が一体自分をどういう存在だと思っているのかはひとまず置いておくとして、少年にとって確かに絶好の機会であろう。  大親友のテラっちをはじめ、土曜日には居ない学童が多い。故に同学年で何となく集まれば、男女混合で遊ぶ事になるのも、まあそうなるよねという雰囲気でなんとかなる。  職務を放棄しくさった天使と悪魔に両耳から煽り散らされ、しかし今日こそはという少年。  自習の時間を終えると、そそくさと少女の元へ向かう。 「ぷ、ぷぷぷプリキラの、えっとアレなんだけどさぁ!」  上擦った声だが、少年は遂にいった。プレゼンター共も諸手を挙げて大喜びである。うっとおしい。  しかし、頬を紅潮させて話しかけたその言葉は、 「プリキラなんてみてない!」 青ざめた少女の、悲痛な声で途切れてしまった。 「もうそのはなしやめて!」  少年から逃げるようにして走り去ってしまった少女。 「……あっ」 『……あっ』 『……あっ』  嗚呼。  来たる日が、来てしまったのだ。  まあそりゃそうだろう。プリキラについての2人の会話は内緒というには余りにも声が大きかった。  とても悲しい事ではあるが。  来たる日は、よりにもよって今日、訪れてしまったのだ。
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