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電話口でママが話している。
夕刻、少女のご母堂から掛かってきた。
『うちの子が、どうやらお子様を傷付けてしまったようでして…』
どうやら少女は泣きながら帰宅し、ご母堂を大変に驚かせたようだ。
慌ててホットミルクを飲ませ、多少落ち着いた少女から詳しい話を聞く。
『昨日、プリキラを観てる事を、お友達に誂われてしまったみたいなんです』
ご母堂のその言葉に、ちょっぴり胸を撫で下ろすママと天使と悪魔。『よもや彼にラブスーパミーなの?オールオブミーなの?』ではなかった。せめて、良かった。
「あぁうん、了解です。まーこればっかりはねぇ…」
溜息を吐いて少年をチラっとみるママ。
少年は完全防御型ベイソードXの安定した回転を無表情に眺めている。
「2年生でプリキラはもう誂われちゃうんですね。しょうがないですよ」
『はい、あの……正直、はい。プリキラ観てるくらいで、なんだよって思います』
「プリキラどうのってよりも、背伸びしたいお年頃なんでしょうね」
『そうかもですけど、だからってヒトの好きなものを…』
「怒らない怒らない。あはは、今度お茶でもどうです?」
『あ、す、すいません。あの、是非…』
「ともかくうちの子が学童保育嫌がらなくなったのは、ホント、おかげさまだから。ありがとうございます」
『とんでもない、こちらこそです。あの……本人、謝らせたいんですがどうでしょうか?電話口なら…』
「やめましょ。なるようになるし、当人同士でどうにかしますって」
『うーん……そうですね』
そういうものなのだろう、親はよく分かってるようだ。こういったアレコレを何度も経て、男の子になり、女の子になるのだろう。
仕方のない事であるのだ。
なぁ。
汝等よぉ?
『ウチのボンが勇気出したんだろうが。なんだちょろっと馬鹿にされたくらいであのガキの態度は。だいったいよぉ、アタシ最初っから気に入らなかったんだなー』
『燃ヤセ燃ヤセ魔ノモノナラ燃ヤシテシマエ天ノモノナラ燃エハシマイ燃ヤセ燃ヤセ魔ノモノナラ燃ヤシテシマエ天ノモノナラ燃エハシマイ…』
『おーいうっせぇぞー?』
『燃セ燃セ燃セ燃セ燃セ燃セ…』
『ダメだこりゃ。おーいボン?簡単だ。もー話さない。な?以上。ハイかいさーん』
『納得いきません!ボン!周りの声を気にする必要などないのです!いま一度対話を!』
『ボーン、こいつの話聞くなよー。わざわざ嫌な思いする必要ないぞー』
『ノン!ノンノン!ボンよ!悪魔の囁きこそ聞いてはなりません!困難は乗り越えるために存在するのです!勇気を振り絞りなさい!ハレルヤ4べぇだあああああ!』
仕方ないっつってんだろ。
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