ニチアサよ、祝福あれ。

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 この日。この素晴らしい一日。  少年も、少女も、互いの両親も、そのプレゼンター達も、全ては喜びに溢れ、幸福に包まれた。  少年にとって最良となった日。  あるいは少女にとっても、最良となった日。  だが時は、悲しい程に失われてしまう。  この日から、少年少女がプリキラについて言葉を交わす事はなく、また、3年生ではクラスも離れた。  互いに学童保育も止めて、土曜日の友情すら途絶えてしまった。廊下ですれ違えば挨拶を交わす程度の関係。  そう、キラヤミーの活躍について語らっていたあの時は、もう決して戻らない。  少年の、もしかしたら少女も。  その恋心は、なんとなくついえた。  寂しい結末である。  しかし、ではあの最良の日が、無為なものであったのか。仕方のない事で、済まされてしまうのか。  否。  それだけは、否である。  なぜならばこの先、二人はきっと、プリキラを観続けるだろう。  その熱は、少年があの日ベイソードXに傾けていたものよりもずっと小さく。  だが決して絶えるものではないのだから。  少年と少女の席はやがて離れたが。  ニチアサだけは、今も思いを共にする。  テレビ画面にプリキラが躍る度、2人はあの最良の日に瞬いた、小さな光を思い出すのだろう。  それはほんのささいで、だが何よりも豊かな幸福なのだ。 『キラブラックだろ。ぶっちゃけ』 『キラホワイトです。ありえない』  我もアマプラ加入しちゃおうかな。  ともあれ。  いつか2人が、笑って話せるその日まで。  プリキラよ、永遠なれ。  ニチアサよ、祝福あれ。
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