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【第一章】I カフェでの日常(ロゼッタ視点)
【カフェのウェイトレス•ロゼッタ視点】
朝の刻、七。
私、ロゼッタの一日はカフェの清掃から始まる。観葉植物に水をさし、お店の隅から隅までを拭き掃除するこの時間は、私にとって無になれる最高の時間だ。
(今日もいい天気! いいお店!)
清掃を終えると、従業員用のドアからずんぐりむっくりしたお爺さんがやって来た。頭頂部の白い髪は控えめだけれど、いつも清潔感がある。
「おはようございます、ドン爺」
「はよお。……相変わらず早いの」
ドン爺は笑顔一つ見せないまま挨拶を返すと、控え室で白いエプロン姿に着替えた。彼はこのお店、ローズガーデンの気儘なパティシエである。無愛想だけれど、根は良い人だ。
(あ、生地の焼ける香り)
ローズガーデンの看板メニューは、日替わりの『本日のオススメ』だ。私達はその日、その時に一番美味しい果物を使ってメニューを考える。といっても、殆どがこの道50年のドン爺のオススメだ。
「ロゼ、行こうかの」
私達の日課は店の外にある倉庫の果物の状態を確かめにいくこと。ドン爺は昨日自分で仕入れて来たという王都の名産品ナマカドイチゴを私に一粒渡して来た。
パクリ、と大粒の果実を口に含むとジュワッとした果汁が口の中いっぱいに幸せをもたらす。
「美味しい......。丁度食べ頃ですね」
「ミルフィーユの生地を焼いていてな。サクサクの生地にバターをじゅわっと」
「素敵です! 今日は少し暑いですし、アイスを付けても良いですね」
「ふむ、悪くないのぉ。ミルフィーユの間にナマカドイチゴとバニラアイスを挟むか。王都ミントで爽やかさを足して……」
そそくさと厨房に戻ったドン爺は、綺麗に焼けたパイ生地をサッと切ると、試作品をいくつか作って渡してくれた。ひとつ味見すると、サクサクのパイに甘酸っぱいナマカドイチゴがマッチする。
「今日の主役は決まりですね!」
「じゃの」
「じゃあ、私はここに薔薇を添えましょう」
私は用意しておいたナマカドイチゴを薄切りにし、薔薇のように並べたものを飾った。大小の薔薇がプレートを華やかにする。ここに、粉砂糖をふって完成だ。
「相変わらず器用じゃな」
「ふふ、ドン爺もなかなかの腕前で」
こうしてカフェ、ローズガーデンは開店準備を進めて行く。
(今日の開店も胸が躍りますね!)
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