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しばらくして、母がリビングに戻ってきた。その手には何冊もの黒い日記帳がある。だが、母の書いている日記帳は赤色だったはずだ。
「お母さん、それ誰の日記?」
「お父さんのよ。こころがこの家に来た時から、ずっと書いてるの」
母はそう言い、一番古い日記帳を私に手渡す。日記帳はどこかボロボロになっていた。
「どうせ、私に対する恨み言でも書いてあるんじゃないの?」
私が冗談半分本気半分で言うと、「いいから読んでみなさい」と母は真面目な顔で言う。これは読まないと面倒なことになりそうだ。私は手の中の日記帳を見つめる。
どうせ嫌われている……。そう思っていても、ページを捲る手が震える。
(死んでほしいとか、一生姿を見せないでほしいとか、そんなこと書いてあったら嫌われてるってわかっててもショックだな)
過去一番とも言えるほどの緊張を覚えながら、私はページを捲る。そこには、父の書いた綺麗な字が並んでいた。
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