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まぁ、いいけど、と応じる声は諦め半分といった調子だったが、折原もどうでもいいことを富原によく話していると知っている。
……俺が、何回、あいつに余計な小言貰ったと思ってんだ、本当に。
その過程で、俺が余計なことを言ったこともあった気がするし、折原の数少ない甘えることのできる相手だと知っているので、まぁ、いいのだが。
「今はさすがに思わないですけどね。向こうはけっこう名前で呼ぶ人が多いし。まぁ、でも、昔はね」
「嫌だったって?」
「なんで、こんな名前つけたんだろって思ってた時期はあったな。キラキラネームってほどじゃないけど、女の子に多い名前であることは事実じゃないですか」
たしかに、それはそうかもしれないな、と思う。
最近の生徒の名前に比べるとシンプルな部類だろうとも思うが、こういったものは幼少期の体験と結びついて嫌になったケースが大半だろう。
結論付けて手を止め、そっと視線を上げる。
「藍」
「ん?」
「って呼ばれたいの?」
ぱしりと瞳を瞬かせた折原が、わずかに首を傾げた。考えるような間のあとで、「べつにいいかな」と答える。
「今は『折原』って呼ぶ人のほうが少ないし」
「たしかに。いまさら、俺を先輩って呼ぶのも、おまえくらいだな」
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