プロローグ

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 三年ほど前から恒例になっている、シーズンオフの恒例行事。折原は普段ドイツの一部リーグでプレーをしていて、シーズンが終了したこの時期に一ヶ月ほど帰国する。  その際に母校に顔を出す理由を「育ててもらった恩返しのようなもの」と。なんでもないことのように折原は言うけれど、現役の日本代表と触れ合うことのできる機会は、部員たちにとって貴重なものに違いない。  三年前。俺が着任してからはじめて折原がサッカー部に顔を出したときも、たぶん、きっとそうだった。  有馬先生と並んで職員室に向かいながら、当時のことを思い返す。あのころの生徒たちはもうみんな卒業して、大学でサッカーを続けている生徒もいれば、違う道を進んだ生徒もいる。  それで、折原と付き合うようになってからも、三年が経った。とは言っても、暮らす場所が日本とドイツと遠く離れている。顔を合わせて過ごした時間を数えると、半年にも満たないのではないかと思う。  けれど、その生活基盤もお互いが自分の意思で選んだものだ。会える時間が少なくても、なんの不満もないと思っていたし、折原もそうだと思っていた。 【夢の続きの話をしよう2】
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