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4
父は、ロベルトに返事をする隙を与えないほどしゃべり続けている。クララは好きな人に向けて一言も発することなく、横顔を見るだけだ。
教師として生徒の変化に鋭敏な父だが、娘の恋心にとても鈍かった。顔を曇らせる娘に向かって言った。
「どうした、クララ。疲れがたまっているな。背は母親と変わらないぐらいになったが、まだまだ子どもだ。早く寝かさねば」
クララは父のあしらいに憤りを感じたが、弟たちとともに継母によって寝室に連れていかれた。
旅から戻った翌朝もクララはピアノの練習を怠らない。指を温め、鍵盤におろす。音の波が幾重にも広がると、通りがかりの人たちの足を止め、微笑み合うのであった。ライプツィヒ随一の音楽教師とその娘の天才ピアニストが戻ったことは、間もなく街じゅうの人々の口の端にのぼった。
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