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「おかえり。どこ行ってたんだ?」 玄関前で、依頼から帰ったクーガと鉢合わせる。 「ちょっとニシ先生のとこ」 「具合が悪いのか?」 「熱っぽくて。軽い風邪だってさ」 「じゃあ看病は無理かな」 「なんで?ていうか、その人は?」 先程からクーガは肩で見知らぬ男を抱えている。 「マモノを拾っちまった。撃たれたみたいで、放置してたら今夜中に死ぬだろうな」 「またそんなモノ拾って…。うちじゃ飼えないよ」 男が地面にドサリと落とされる。 「人のカタチだけど魔物なの?僕と同じタイプの個体?」 「たぶん。だってほら、この傷で息があるぜ」 「ほんとだ、頭やられてる。人なら即死だもんな」 「ニシ先生に診せたらこのまま解剖されちまいそうだ」 「そうだなあ…」 「とはいえ知らない奴だし、これからの人類のために先生のとこ連れてくか」 「まあいいよ。ベッド貸してやろう」 「いいのか?」 「拾って来ちまったもんは仕方ない」 「悪いな。なんか無視できなくて。…で、どうしよう?悪い奴じゃないんだ、たぶん。悪い奴ならトドメさしてたけど」 「そうなの?助けといてなんだけど…こいつどうせだろ。幹部クラスかな?身なりがいいもん」 パパとは、シロを拾った組織のボスだ。パパと呼ばされていたので、いまでもそう呼んでいる。 「実はコイツ、前からよく街で見かけてたんだ…マモノとは知らなかったが。めちゃくちゃ悪いコトしてるんだろうが、組織の他の連中みたいに威張ったりしないで、なんかよく喫茶店で暇なじいさんとかと楽しそうに話してるの見るから。…だから、なんかな」 「ふうん。ま、いいけど」 ふたりはまだ目覚めないその男を、とりあえず二階の居住部分で寝かせることにした。 ー「明日には帰れるよ。今日はゆっくり寝ていなさい」 患者は頭を数針縫う大怪我をしたが、命に別条はない。 「久々に仕留めましたね」 モグが、頭を数発撃たれて事切れた魔物を、袋からずるずると引きずり出す。殺したのはニシだ。往診で通った森の中で、魔物に襲われていたこの患者を助けるため、持っていた猟銃で仕留めたのだ。5発撃ったが、そのうち頭に4発喰らってようやく息絶えた。 「よーやく新しいヤツを解剖できるぞ」 「この患者、危なかったっすね。ギリ血清が足りてよかった。あともーちょいでゾンビだった」 そうそう、魔物に噛まれたら人間生活とはおさらばだ。ゾンビ映画とおんなじことになる。僕が開発した無認可のワクチンで一応助かるようにはなったが、ときには手遅れの患者もいる。そしたら魔物化する前に特殊部隊に連絡する。人里に現れて悪さをする奴は、今回のように、ズドンだ。 「もっともっと強いワクチンが作れればなあ。たくさん研究するぞ。研究研究、解剖解剖………」 ー「お、復活」 「……うおっ」 なんとなく顔を覗き込んだタイミングで、偶然に男が目を覚ました。眼前のクーガに驚き、ビクリと身体をふるわせる。 「おっと、下手な真似はよせ。俺はお前の命の恩人だ。ついでに銃はとっくに抜き取ってある」 ベルトのあたりを触る。確かに、忍ばせていたのが無い。 「お前、ロベルタんとこの奴だろ。知ってるぜ。名は知らないが、身なりがいいから、たぶん幹部とか上の方の奴だ」 シロが言っていたことをそのまま告げる。 「アタマに、恐らく猟銃で1発喰らってぶっ倒れてたんだ。そこの森でさ」 男は何も言わず、あいまいな記憶を探る。 森、猟銃、アタマに1発、森、猟銃、アタマに……… 「人間が……」 そうだ、人間が魔物にやられていた。あの森で。それで俺は… するとそのとき扉が開いて、見知らぬもうひとりが入ってきた。 「あ、起きてる」 その顔を見て、男が眉を寄せながら掠れた声で言った。 「お前…知ってるぞ、爺さんたちが話してたべっぴんのカマ野郎だ」 「は?」 現れた青年は、この街いちばんの別嬪と名高い、あの……
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