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え?
何々、どうなってるの?
ここは会社の中よ?!
私は、あの二人が部屋を出て行ったのを食い入るように見つめた。もちろん誰にも分からないように。
そう、彼らは付き合っている。
誰も知らない関係。
・・・私だけが知っていること。
私はパソコンの画面を見つめ、カチャカチャと小気味いいリズムでキーボードを叩いていく。もちろん意識は隣の部屋だ。
きっと今頃は加藤さんが相沢くんを慰めているのね・・・。
相沢くんが落ち込んでるなんて私には分からなかった。
加藤さんだから気づいた変化・・・やっぱり愛よね。
私は周りにこの興奮がバレないように、無表情で仕事を進める。
ああ、そんな!
触れていいのは肩までよ、加藤さん!
相沢くん、そんな切なそうな顔しないでちょうだい!!
隣の部屋で何が行われているのかを想像してしまい、自然とキーボードを叩く音が強くなる私。
すると、隣の部屋からガタッと大きな音がした。
はうっ!!
私はもう仕事どころではなく、全ての意識が隣の部屋へと持っていかれていた。
ダメよ、二人とも!!
ここは会社!! 会社なのよ!!
はあ・・・
もう・・・ダメ・・・。
・・・
「大丈夫?小室さん」
心配そうに私を覗いている同僚の顔がそこにはあった。
私は気まずい空気を誤魔化すように笑って「ちょっとお手洗いに」と席を外した。そして事務所の扉を出てすぐ、はっとした。
・・・覗いてみる?
と思ったけど、そこで私は首を振って本当にお手洗いに行って頭を冷やしたのだった。
【次項へ続く】
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