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いつものように、元気に挨拶しないと。
僕は扉を開ける前に、一つ深呼吸をする。
「ただいま戻りました!」
突然の大きな音と声に、部屋中の目が一斉にこちらを向いた。しかし、相手が僕だと分かると、皆一様に視線を戻して作業を再開する。
そんな中、一人こちらに近寄る人物がいた。
「おう、お帰り」
彼は僕の上司で、加藤さん。僕が入社してから、ずっと指導してくれている面倒見のいい先輩だ。加藤さんは、いつもの爽やかな笑顔で僕を労うように肩を叩いてきた。
「痛いっすよ、加藤さん」
僕はちょっと困ったように苦笑いした。すると、加藤さんは僕の顔を覗き込んで尋ねてきた。
「どうした?何かあったか?」
ホント、この人には敵わないな。
「すんません。後で話を聞いてもらえますか?」
「ああ。それなら打ち合わせついでに聞いてやる」
加藤さんは僕を叩いていた手をそのまま伸ばし、がしっと肩を抱いてきた。
そして僕達はそのまま隣の小会議室へと向かった。
【次項へ続く】
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