第十五章 略奪者

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 正直、優真君達と話すのは楽しかった。仕事の時以外で、誰かと世間話をするのは久々だからだ。  朋美がいなくなってしまった今、友達と出掛けることは、もう出来ないかもしれない。  彼女がいない現実を目の当たりにし、私は風で揺れる髪を手で押さえつつ、泣くことを耐え忍ぶ。  それを知ってか知らずか、岩島さんは溜め息を吐いて、 「風邪引かん程度に帰ってこいや」  と言って、彼は来た道を戻っていく。  私はそんな岩島さんの寂しい背中を見つめながら、感傷に浸っていた。  河中さんが話せるようになったのは、一週間も先のことだ。普通なら罪に問われるのだが、亮平おじさんが示談で済ませたことにより、彼は罪には問われず。  なぜおじさんが示談にしたのかは分からないが、そのおかげで河中さんは通常の病院に入院出来ている。  クリーム色の壁に囲まれた、白いベッドの上。そこに横たわっている河中さんの身体には、白い白い包帯が巻かれている。そこから見えるのは口と目だけで、肌がどうなっているのかは分からない。 「命に別状がなくてよかったな」  河中さんは天井を見つめたまま動かず。黙ったままの彼に声をかけるのは、丸椅子に座った岩島さんだ。  すると、声に反応したのか、河中さんの黒い瞳が岩島さんの方へと向く。そして、彼は強張った唇を動かして話し始めた。 「……死んだ方がマシだった」  ガラガラの掠れ声で話す河中さんの瞳が徐々に濡れ、彼は何度も「死にたい」と声に出して話す。  焼身自殺を図るぐらい追い込まれていた彼に何があったのか聞きたいが、聞いてはいけない気がして。  シンと静まり返った病室の中、同じ病室内にいる患者さんの咳をする音が聞こえる。 「何言うてんねや? まだ死ぬには早いて」 「ばってん、俺は生きとるほうが辛か」  河中さんの口振りは、暴力団だということを感じさせず。弱々しい彼を見ていると、ホテルで起きたあの一件が嘘だったかのように思える。
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