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加奈
加奈とは小中学校の時の同級生だった。
身体の弱かった加奈は、休みがちだった。オレは連絡帳を回すために、よく彼女の家に持って行った。
「悪いわね、圭君。昨日、ようやく起き上がれたと思ったんだけど……」
加奈のお母さんは、小さなオレをいつも笑顔で迎えてくれた。
「ううん、おばさん。家、隣りだし。別に全然気にしてないよ。それよりこれ、うちの母ちゃんが作ってくれたクッキー。加奈ちゃんに食べさせてやって」
「え? 良いの? いつも悪いわね。これ、持ってって」
加奈ちゃんのお母さんは、お返しに家庭菜園で穫れた野菜を渡してくれた。
「ありがとう! このトマト、美味いんだよね」
そんな関係が、中学三年まで続いた。
ところが、中三の夏。加奈の一家は、突然いなくなってしまった。
加奈ちゃんとは、挨拶も出来ずにお別れをしてしまったのだ。
後で、オレの母に聞いた話では、加奈ちゃんの病気が悪化して、環境の良いところに引っ越したとのことだった。
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