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加奈は事故で
「えっと、葛城圭さんですね。あれの持ち主は」
案内された場所は、手術室だった。
「……こ、これは」
「ええ、ロボットですね。人間だと思って運び込んだんですが」
手術台の上に、脇腹から機械をのぞかせた加奈が横たわっていた。
オレは、足が震えてその場に釘付けになった。
執刀医らしき白衣の人間が、オレの肩に手をやった。
「血と思われたんですが、流れ出たのは赤いオイルでしたね。もっと早く気付けば良かったんですが、通報した人が人だと思ったらしくて」
「そ、そんな……。あの、加奈ちゃんが、ロボット……? バカな!」
オレは目の前で横たわっている加奈の顔を覗き込んだ。
触ってみた。
冷たい。
動いていた時の彼女は、体温もあった。それに、柔らかかった。
目蓋を開いてみた。
初めて、その瞳をじっくりと見た。
「こ、これは……。カメラか」
何かの間違いではないかと思った。
ただ一つ、不審に思ったことは、裸を見たことがなかっただけだが、その露になった身体も、人間のそれと遜色なかった。
「せ、先生。これ、本当に加奈ですか?」
オレが医師に迫ると、横から女性が割り込んできた。
「間違いないと思います。このロボットの持ち物です」
山下看護師が、一枚のカードを取り出した。
「ロ、ロボット登録証……」
この時代、人工知能を搭載したアンドロイドには、ロボット登録証の携帯が義務付けられていた。
それに顔写真と、登録番号が記されていれば、間違いなくロボットだ。
つまり、オレが加奈だと思って愛していた相手は、それがロボットだという事の証明なのだ。
「ま、まさか……。そんな、バカな!」
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