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お嫁さんになりたくて……
ギィ
手術室のドアが開いた。
「あ、圭君……」
それは、オレの義母となった加奈の母親だった。
「お、お義母さん。これ、どういうことですか!?」
オレは思わず義母に詰め寄った。
「ご、ごめんなさ……」
義母は下唇を噛み締めて涙を流した。
「あ、謝らなくて良いです。説明してください、加奈は、加奈ちゃんはロボットだったんですか? オレは、加奈ちゃんだと思って結婚したんですか」
「加奈は、加奈は。私たちが引っ越したのは、加奈が亡くなったからなの……」
義母は、声を詰まらせながら説明を始めた。
加奈の一家は、加奈が病気で死んでから、その事実を告げずに療養のためと偽って引っ越しをた。
それは、生前の加奈の遺言だったという。
「多分、ハンバーグとカレーを作ったと思いますが、あれは私たちが3人で最後に食べた料理だったんです」
義母がそう言った時。
オレは思い出した。
その時、知らず知らずのうちに、オレは涙を流していた。
「じゃ、じゃあ、あのロボットは」
「加奈が亡くなった時、加奈の記憶と性格を全て人工知能に移して」
義母は、そう言うとロボット加奈の頭を指さした。
「亡くなる前、どうしても、あなたのお嫁さんになりたいって言って……。ごめんなさい、ごめんなさい」
何度も何度も、義母は頭を下げた。
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