怪しい女

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俺は久々の休日に退屈しのぎで深夜、山中をドライブしている。始めは慣れた景色に余裕をこいていたが、だんだん険しくなる山道に怖くなって場当たり的な自分の安易な行動に今更ながら後悔していた。 ここは女幽霊が出ると噂される山道。霧もうっすらと立ち込めだし視界もままならぬ延々と続く曲がりくねった一本道は、さながら異界にでも迷い込んだかのような錯覚を覚えていた。 恐怖を押し殺す為に付けていたラジオの音がプツリと途絶える。 「あ~やっべー。これはマジでヤバイ。早くここをでねぇと…。」 電波が届かない状態での迷子はキツイ。俺は極限状態の中、震える手でハンドルを握り締め息を殺しながらヘッドライトに照らされた細道を目を見開いて走っていた。当然、心拍数はやばい。息もたどたどしいし、もう気が狂いそうだ。 そんな中、奥の方で道の脇に白っぽい物がぼんやりと映るのが見えた。 「ん?んんー?」 俺はブレーキを踏み、咄嗟に停車して目を凝らして、その対象を見た。 「………………。」 「………………。」 ゆらりと白いワンピースの裾を風で靡かせ色白の黒髪ロングの女が無言で佇む。お互い呆気に取られて暫し固まると女が両手を広げて腕をバタバタさせて大声で叫びながら全力でこっちに向かって走って来た。 「たーすーけてくださあああぃぃ!」 俺は、お化けが出たのかとパニックになると慌ててギアをバックに入れ暗くて視界の狭い山道を後退した。 「待って!待ってくださいっ!!」 女は鬼気迫る表情を浮かべながら車に追いつくとフロントガラスを両手でバンバン叩いてドアノブをガシガシ引っ張った。 「うああああー!」 俺は声にならない悲鳴を上げながらバックをするも足が硬直してうまくアクセルが踏めないでいた。 「待って!人ですよ!幽霊じゃないから落ち着いてくださいっ!!止まってーー!」
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