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「はい、喜んで」
営業用の口調で答えてみたが、心の奥にはずしんと重い石が乗せられたような感覚があった。
「そうだ。これ、アンちゃんに似合うと思って。途中で買ってきたんだ」
そう言ったバジムは、上着の内ポケットから小さな箱を取り出した。内ポケットに入るくらいの小さな箱だ。
「開けてもいいですか?」
客から贈り物をされたときは、断らずに受け取りなさい。それがこの店の教えである。
「もちろん」
小箱を開けると、浅葱色の魔石が輝く耳飾りが一つだけ入っていた。
「ほら。僕は魔石調査の専門だからね。少しだけ変わった魔石を手に入れたから、アンちゃんにと思って、加工してもらったんだ」
「ありがとうございます」
「僕がつけてもいいかな?」
「……はい」
躊躇いがちに返事した様子は、バジムには恥ずかっているように見えたのかもしれない。
ひやっとしたものが耳に触れた。
「ほら、よく似合っている」
バジムの浅葱色の目が柔らかく揺らめいていた。
「アンちゃんは、いつも僕の話を真剣に聞いてくれるからね。それの御礼」
「嬉しいです。ありがとうございます」
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