第八章

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第八章

 五日続く祭りの四日目を迎えた。今日もこの日は、朝から賑やかに花火があがった。  どこから人が湧いてくるのかと思えるくらい、街中は人でごった返す。  バジムも「この祭りの期間はマヤンの人口が二倍以上に膨れ上がる」と言って笑っていた。それだけ注目されている祭りなのだ。むしろ、魔石が注目を浴びているといってもいいだろう。  エミーリアは客から祭りに誘われてもいいようにと準備はしている。だが、初日にローランから誘われて以降、彼女を誘うような客はいなかった。  イレーヌは日替わりで客から誘われ、毎日のように祭りへと行っている。今日は何を買ってもらった、何を食べた、と聞いてもいないのにエミーリアに教えてくるのだ。エミーリアは笑みを浮かべて、それを黙って聞いていた。  色彩豊かなテントが並んだ様子は、彼女が与えられたこの部屋の窓からも目に留まる。さらにテントの隙間からは、人々の姿も良く見えた。迷子になっている子供、待ち合わせに遅れてきて謝っている男、寄り添っている年配の夫婦。しばらくは、彼らの動きを目で追っていたが、虚しくなって寝台の上に腰をおろした。
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