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約束もしていない人物を待つのが、こんなに苦しいものだとは思わなかった。
「できるだけ会いにいく」とささやいたあの言葉は、偽りだったのかと疑いたくなるほどに胸が痛む。
頭にはローランからもらった髪留め、右耳にはバジムからもらった耳飾り。
(だからって、ローラン様の前でこの耳飾りは、外したほうがいいわよね)
彼に会いたいと思いながらも、他の男からもらった耳飾りをしている自分を虚しく思う。
仕事だからと割り切った気持ちと、ローランに会いたいと願う一人の女としての気持ちが、心の中でくすぶっていた。
太陽は真上にある。エミーリアがアンとして仕事をするまでには、まだ時間があった。手持無沙汰になっていた彼女は、仕方なく刺繍を始める。これも、ここで働く者たちの嗜みの一つである。
そうやってなんとかもてあました時間をやり過ごし、店に出る時間となった。
結局、その日もエミーリアが祭りに足を運ぶことはなかった。
「アンさん。イレーヌさんのテーブルについてください」
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