第八章

5/36
前へ
/295ページ
次へ
 そんな状態であっても、客と思われる男たちは黒ずくめの人間の後ろにある扉へと一斉に向かっていく。  ドンッ――。 「わぁっ」 「俺の声、聞こえなかったのかな。俺の言うことを聞けって言ったのね。勝手なことをされると困るんだよね」  男は手にしていた魔導銃を、客の一人の男に向けて撃った。撃たれた男は、太腿から血を流して倒れている。 「あ~あ、綺麗なお店が汚れちゃったね。でもね、俺たちは君たちを殺したいわけじゃないんだよ。ちょっとだけ、実験に付き合ってくれればいい。ね、撃たれちゃって痛いよね」  倒れた男の前にしゃがみ込んだリーダーの男は、血を流す男をじっと見つめている。 「痛いよね。楽になりたいよね」 「うぅっ……」  遠く離れているエミーリアからも、男の太ももからどくどくと血が流れている様子がわかった。  撃たれた場所が悪かったのだろう。早く治療しなければ、失血死してしまうかもしれない。 「俺って慈悲深いからね。君のその怪我、あっという間に治してあげるよ。って、そこのやつ。今、魔法を使おうとしたな?」
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

432人が本棚に入れています
本棚に追加