第八章

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 リーダーの視線が鋭く射抜いた。その視線の先にいるのは、客として娼館を訪れていた官僚風情の男。  くつくつとリーダーは喉の奥で笑う。 「だが、残念だったな。この建物内に、魔力吸引結界をしかけたからな。生活魔法すら使えないはずだ。使おうとした君なら、わかったんじゃないのか?」  そう言われた男の顔が青白い。リーダーの言葉は事実なのだろう。 「さて、と。そろそろ一か所に固まってもらおうかな。俺たちも、そうやって君たちにうろちょろされるとね、余計な体力を使っちゃうからね」 「その方の……、治療をさせてもらえませんか?」  おずおずと娼婦の一人が声をあげた。倒れている客の相手をしていた娼婦だ。 「あぁ。なんだって君は優しいんだね。君たちをおいて逃げようとした男なのに。だが、その心配はいらないよ。俺のほうで適切な処置をしてあげるからね」  リーダーは上着の内側から何やら取り出すと、動きの少なくなった倒れている男の口を強引に開ける。 「ほら。飲め」  ぼんやりとしている男は、言われるがままそれを飲み込んだ。  リーダーは何を飲ませたのか。 (あれは……。魔石? しかも原石……)
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