第八章

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 この部屋の入り口は二か所ある。今、入ってきた入り口と、二階へ続く階段への入り口と。  見張りはどちらにもいる。  それに、この特別室はそこそこ広い。館内にいた客と関係者が全員入れるほど。  ただ、自由に動き回れるほどの余裕はない。みな、ひしめき合って膝を抱えて座っている。幾人かは、ふかふかの椅子に座ろうとしていた。  だが、すぐに黒服の男に咎められる。 「お前らには床がお似合いだ」  魔導銃を向けられながら言われれば、黙って従うしかない。これだけ広くて立派な部屋であるのに、椅子に座る者はおらず、部屋の隅に寄り添って膝を抱えていた。 「お前たちには、それがお似合いなんだよ」  黒服の男は小馬鹿にしたように笑った。 「こ……、こんなところに閉じ込めて。ど、どうするつもりだ」  客の一人が震える声で尋ねた。 「おやおや、いい質問だね」  黒服の男は質問をした客の顎をとらえて、無理矢理口を開けさせた。 「優秀な君にはこれをあげようね」  客の男が飲まされたのは、もちろん魔石である。 「うぅっ……」 「聞くよりは実際に身をもって体験したほうがわかるだろう? お前たちがなぜここに集められたのかを」
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