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魔石を飲まされた客の身体は、大きく弛緩した。目をかっと見開くと、みるみるうちにその目が赤く染まる。だらしなく口を開け、だらだらと涎をこぼす。
「なんだ、こいつ。口ほどにもないな。魔石に負けてやがる」
エミーリアの後方からは、荒い息遣いが聞こえてきた。イレーヌや他の娼婦たちは、目の前の光景に怯えている。
「お前たちは実験台。魔石を飲んで、魔人になってもらうよ。ま、ひと昔の魔獣のような感じだ。魔石に負けなければ意思も保てるからね。だが、負けるとこいつのようになっちまう。ただ、欲を求めるだけの存在。こうなるとね、洗脳も難しいんだな」
ドンッと、男は魔導銃をぶっ放した。弾は男の身体に当たり、その身体はビクンと大きく震えてから、ピクリとも動かなくなる。
「ひっ……」
息を呑むような声が、至る場所から聞こえてくる。
「こんな場所にいるような人間には、魔石の餌がちょうどいい。大人しくしてろよ」
動かなくなった身体を、黒服の男は蹴った。撃たれたにもかかわらず、その身体から血は流れ出ていなかった。
(魔石を飲む……。魔獣……、魔人……。もしかして、そういうこと?)
エミーリアははっと気づく。
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