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「あなた一人くらいいなくなっても、気づかれないように誤魔化すから。とにかく、外にここの状況を教えて、助けを呼びなさい。この通気口もあなたくらいしか通れそうな人はいないのよ、アン」
無理矢理手首を掴まれた。
「暗いかもしれないけれど、一本道だから。這っていきなさい」
周囲の目がエミーリアに期待を寄せている。だが、黒服の男たちに気づかれないようにと、すぐに平静を装う。
この場でママが口にした通気口を通れるような人物は、エミーリアくらいしかいないのだ。それに、他の者たちも気がついている。理由は明確。彼女がこの中で一番小柄だから。
「アン、頼んだわよ」
一気に周囲の期待を背負ってしまった。
「はい」
エミーリアは姿勢を低くして、ママの背後に回る。そのまま、彼女の身体に隠れるようにして、通気口へと身体を潜り込ませようとしたが、ドレスが邪魔だった。人影に隠れるようにしてドレスを脱ぎ、ママに手渡した。
「預かるわ。これがあったほうが、誤魔化しがきくから」
シュミーズとドロワーズ姿となったエミーリアであるが、不思議と恥ずかしさはなかった。
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