第八章

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 先が見えたのは、いくつか突き当たった場所を曲がった時だった。目の前に微かな光が見えた。外は夜。それでも目の前は微かに明るい。  わずかな光を目指して進む。  出口と思われる場所には、やはり鉄格子がはめられていた。それに手をかけて外そうとする。 「エミーリア」 「え?」  鉄格子の隙間から向こう側を除くと、ローランの顔が見えた。彼は身体をかがめてこちら側を覗いている。 「今、これを外してやる」  ふん、とローランが手をかけると、鉄格子は難なく外れた。  彼の手がエミーリアの肩をとらえ、狭い空間から引きずり出した。 「な、なんという格好を……」  空には星が瞬いているが、建物から漏れ出す光が周囲を少しだけ明るく照らしている。  すぐさまローランは、着ていた上着をエミーリアの肩にかけた。  彼の温もりが伝わってきて、震えていた心が包まれた。 「それにしても、ローラン様はどうして、こちらに?」
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