429人が本棚に入れています
本棚に追加
先が見えたのは、いくつか突き当たった場所を曲がった時だった。目の前に微かな光が見えた。外は夜。それでも目の前は微かに明るい。
わずかな光を目指して進む。
出口と思われる場所には、やはり鉄格子がはめられていた。それに手をかけて外そうとする。
「エミーリア」
「え?」
鉄格子の隙間から向こう側を除くと、ローランの顔が見えた。彼は身体をかがめてこちら側を覗いている。
「今、これを外してやる」
ふん、とローランが手をかけると、鉄格子は難なく外れた。
彼の手がエミーリアの肩をとらえ、狭い空間から引きずり出した。
「な、なんという格好を……」
空には星が瞬いているが、建物から漏れ出す光が周囲を少しだけ明るく照らしている。
すぐさまローランは、着ていた上着をエミーリアの肩にかけた。
彼の温もりが伝わってきて、震えていた心が包まれた。
「それにしても、ローラン様はどうして、こちらに?」
最初のコメントを投稿しよう!