第八章

15/36
前へ
/295ページ
次へ
「それは、君に贈った髪飾りだな。これに俺の魔法を付与しておいた。君の気配を感じなくなってこちらに足を運んだら、この建物の入り口の前で追い返される人がたくさんいてな。何かあったのだろうかと気が気ではなかった。それでもさっき、君の気配をまた感じられるようになったから、こちら側に来たんだ」  この髪留めにそのような意味があったとは、エミーリアも知らなかった。そのおかげで今、ローランに会えた。 「少しだけ、抱きしめてもらってもいいですか?」  すぐに中の様子を伝えなければならないのはわかっている。 「どうしたんだ? 急に甘えて」  言いながらも、ローランはエミーリアをぎゅっと抱きしめた。  彼の熱に包まれながら、彼女は中の様子を報告し始める。 「突然、黒ずくめの男たちが押し入ってきて……」  ローランは彼女を抱き締めながら、黙って話を聞いていた。  エミーリアも相手がローランであるからこそ、落ち着いて伝えることができる。 「すぐに、第五部隊を動かす。君は、安全なところで休んでいなさい」  その言葉にエミーリアは首を横に振る。
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

429人が本棚に入れています
本棚に追加