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アルフォンスが背を見せたのは、その隙に着替えろという意味だろう。エミーリアは羽織っていた上着をローランに返すと、素早く騎士服を身に着けた。
「似合っているな」
ローランの言葉にアルフォンスも振り返る。
「まったく。団長とエミーで揃って潜入調査ですか? 団長のその格好も、鉱夫そのものではないですか。二人して何をやっているのかわかりませんが」
そこでアルフォンスは建物を見上げた。
「この状況はよろしくないですね」
「お兄様、わかりますか? 魔力吸引結界が張られているのです」
「なるほど。だから、こんな変な感じがするのか。となれば、まずは結界を破る必要があるな」
「トラフィムのもとに向かおう」
アルフォンスの後ろをローランとエミーリアがついていく。
建物の周囲には一定間隔で魔法騎士が並び、彼らはじっと建物を見据えていた。中の様子を探ると同時に、突入の機会をうかがっている。
「トラフィム」
「団長、と?」
「エミーリア・グロセです」
それだけでトラフィムには察するものがあったらしい。
ローランがトラフィムだけは、すべての事実を知っていると言っていたからそのせいだろう。
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