422人が本棚に入れています
本棚に追加
さらにアルフォンスの手を捉えたのはローランだ。
「アルフォンス。お前が妹を想う気持ちはわかる。だが、今はエミーリアの力が必要だ。彼女を信じるのも、兄として必要なことではないのか? トラフィム。突入の準備を進めてくれ。結界を破ったら、すぐに突入だ」
「承知しました。突入は表から? 裏から?」
「裏だな。話を聞く限りでは、中の者は奥の部屋に集められているようだからな」
トラフィムはその場を離れ、部下を集めながら建物の裏手に回る。
「お兄様……」
「魔力の制御、できるのか?」
「やります」
「そうだな。今は、エミーに頼るしかないからな。だが、絶対に無理はするなよ」
頷いたエミーリアの腕輪にアルフォンスの手が触れると、カチリと外れる音がした。
「いけるか?」
「やってみます」
エミーリアは両手を胸の前で組み、目を閉じる。
建物内部に張られている結界を探るように魔力を張り巡らせる。結界の境目はどこか。
ローランもアルフォンスも、黙ってエミーリアの様子を見ている。
がやがやと周辺では人の動く気配がするが、ここの空間だけは静かなものだった。
エミーリアがぱっと目を開ける。
最初のコメントを投稿しよう!