第八章

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 さらにアルフォンスの手を捉えたのはローランだ。 「アルフォンス。お前が妹を想う気持ちはわかる。だが、今はエミーリアの力が必要だ。彼女を信じるのも、兄として必要なことではないのか? トラフィム。突入の準備を進めてくれ。結界を破ったら、すぐに突入だ」 「承知しました。突入は表から? 裏から?」 「裏だな。話を聞く限りでは、中の者は奥の部屋に集められているようだからな」  トラフィムはその場を離れ、部下を集めながら建物の裏手に回る。 「お兄様……」 「魔力の制御、できるのか?」 「やります」 「そうだな。今は、エミーに頼るしかないからな。だが、絶対に無理はするなよ」  頷いたエミーリアの腕輪にアルフォンスの手が触れると、カチリと外れる音がした。 「いけるか?」 「やってみます」  エミーリアは両手を胸の前で組み、目を閉じる。  建物内部に張られている結界を探るように魔力を張り巡らせる。結界の境目はどこか。  ローランもアルフォンスも、黙ってエミーリアの様子を見ている。  がやがやと周辺では人の動く気配がするが、ここの空間だけは静かなものだった。  エミーリアがぱっと目を開ける。
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