第二章

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 だが、騎士ではないエミーリアは帯剣の許可がされていなかった。持ち歩いていいのは、木刀だけ。それを控えの間に一本、置いていた。  その木刀を、この裏手で振り回す。振り回すといっても闇雲に振り回すわけではない。学園時代、剣技の授業で習ったことを思い出し、その基礎をなぞっている。時間にしても、他の者が騎士館にやってくるまでの短い時間である。それは誰にも見られたくないからだ。  屋敷で振り回せば、きっと父親は自分のせいであると、胸を痛めるだろう。だから毎朝早めに騎士館に足を運び、朝のひと仕事を終えたらここに来ていた。  魔法騎士にはなれなかった。それでも「今後、もしかしたら」という微かな希望を持っている。ゼロに限りなく近い確率であっても、ゼロでないのであればそれに賭けたい。むしろ特例を望もうとしてくれた人物がいるのであれば、近いうちに体格による制限がなくなるかもしれない。そういった動きもあると、フリージアは口にしていた。  フリージアは王城内の警備についており、王族の護衛も兼ねている。
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