第二章

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 アルフォンスは国境にある魔石採掘場に派遣されている。何かとごたごたが続く採掘場では、魔法騎士団は誰かしら人を派遣する必要があった。  だからエミーリアは、ここ半年程アルフォンスに会っていない。手紙は書いているから、婚約が解消されたことも、魔法騎士になれなかったことも知っているはずだ。  以前は国境など人気の少ないところには、魔獣もいたという話も聞いている。魔獣とは魔力を備えた獣のことで、人を襲ってくるのが特徴である。だが、その魔獣も今では話題にあがらない。絶滅したのかどうかさえもわからない。  最後の一振りを終え、エミーリアは木刀を腰紐に挟んだ。そろそろローランがやってくる時間だ。彼は他の騎士よりも早くここに来る。それよりも早くエミーリアが来ていた。  音もなくその場を立ち去り、急いで控えの間へと向かった。  ローラン付きの補佐事務官は、今のところエミーリア一人。増える気配はない。フリージアの話を聞いてから、なおさら増員は期待できない。  だが、基本的にエミーリアは時間を持て余しているため、増員されても余計に暇になるだけだと思っていた。  それに、変に他人がいない方が気も楽でいい。
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