第二章

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「お腹は空いておりませんか? 朝食を準備したほうがよろしいでしょうか?」  ローランのこめかみがひくっと動いた。 「昨日は、あちらの部屋にお泊りだったのでは? シーツも取り換えておきます。そちらも私の仕事で間違いありませんよね?」 「ああ、頼む……」 「承知しました。我々補佐事務官は、主が業務を進めやすいようにサポートするのが仕事ですので、不都合な点がありましたらなんなりとお申し付けください」 「ちょっと待て」  ローランは机の中から銀色のプレートを取り出した。 「これは、君が俺の代理で動いているという証だ。これをつけて食堂にいきなさい。今までの補佐事務官にこれを渡したことはない。どうせ、彼らはすぐに辞めていくからな」  ネックレスのように鎖につけたものを渡されたので、エミーリアはそれを首にかけた。その後、隣室で手早くシーツを取り換えてから食堂へと向かった。  食堂は王城で働く者たちの食を提供する場である。そのため、王城関係者であれば自由に利用できる。  適当にパンと果物を見繕って、籠にいれた。  彼女の首元にはローランからもらった、彼の代理を証明する銀のプレートが輝いている。
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