第二章

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 これが事務官の仕事といえばそうなのだが、一度主に呼ばれると、とにかく歩く。特に騎士館は独立した建物になっているため、どこに行くにしても距離がある。 「遅くなりまして申し訳ありません。朝食をお持ちしました」 「遅くはない。君はすぐにそうやって謝罪する癖を直しなさい」 「はい。申し訳ありません」 「ほら、まただ」  指摘され、はっとする。謝罪を口にするのが、エミーリアも気づかぬうちに癖になっていたようだ。 「まあ、いい。朝食はそこのテーブルに置いてくれ。ところで」  ローランの目が鋭く細められた。 「俺の銀プレートはどうした? あれは、君が俺の代理で動いている証であると、先ほども説明したはずだが」 「あ、はい。途中、姉に会いまして、目立つ場所につけておかないほうがいいと言われまして」  エミーリアは服の中に隠していた銀プレートを取り出す。 「こうやって、服の中に隠していました」 「そうか」  そこで会話は途切れた。 「では、私は控えの間におりますので。何かありましたらベルでお呼びください」 「待て」  最近、ローランはエミーリアが立ち去ろうとすると、こうやって呼び止める。
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