第二章

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「エミーリア事務官。君は朝食を食べたのか?」 「いえ、これからです」 「必要であれば、これを食べろ」  ローランからの薦めに、エミーリアは目を見開いた。だが、すぐに元に戻す。 「お気持ちだけいただきます。朝食は、家から持ってきておりますので」  エミーリアが頭を下げると、ローランが眉間に皺を作っていた。どことなく困っているようにも見える。 (もしかして、量が多くて、食べきれないとか……? 身体が大きいから、たくさん食べると思って、たくさん持ってきちゃったんだけど)  エミーリアは自分の朝食は準備してある。これをもらってしまったら、エミーリアのほうこそ食べきれない量になってしまう。 「それでは、失礼します」  今度こそ呼び止められることなく、エミーリアは執務室を後にした。  彼女が朝食を家から持ってきているのは、嘘ではない。  毎朝、屋敷の料理人が、エミーリアのためにパンに具材を挟んだものを準備してくれている。
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