第二章

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 ローランは、彼女が準備したパンを噛みしめていた。ティーポットに手を伸ばせば、お茶も準備してある。これは、初日にローランが伝えたこと。それを忘れずに、毎日同じようにお茶が準備してある。  そういった今までの働きもあり、今日はとうとう彼女に銀プレートを渡してしまった。  今までの補佐事務官は、三日目あたりからここに来る足取りが重くなる。十日も経てば辞めていた。だから、団長代理の証である銀プレートを渡す機会がなかった。  だが、エミーリアは今日でここに来て十日目であり、今までの働きもローランが求める以上のものであった。今後の彼女の仕事の効率を考えて、銀プレートを渡したのだ。彼女はその意味をわかっていなかったようだ。言葉通り「団長代理」と捉えたのだろう。  もちろん銀プレートには「代理」の意味もある。しかし、一番の理由は「信頼」である。信頼できない者に「代理」は頼めない。  わざと見せびらかすように彼女の首にかけてやった。何もわかっていない彼女はそれを受け入れた。  だが、戻ってきたときには銀プレートが首にぶら下がっていなかった。
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