第二章

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◆◆◆◆ ◆◆◆◆  十日を過ぎたあたりから、エミーリアも団長補佐事務官の仕事に慣れ始めた。他の者が十日前後で辞めていたのは、この十日を乗り切るまでが辛いからだろう。  主であるローランはよくわからない男である。ただ、仕事に真面目であることはわかった。それ以外はわからない。  一か月過ぎてもわからなかった。  それでも銀プレートを授けてもらったのは、誇らしいと思う。  チリチリチリン――。  ベルが鳴ると、エミーリアはすぐにローランの元へと向かう。 「悪いが、五日程不在にする」 「はい」 「それまでに、これを調べてまとめておいてくれ」  彼から紙切れ一枚を手渡された。いつものことであるが、座っているローランと立っているエミーリアの目の高さは同じになっている。  渡された紙の内容を読み終えて顔をあげると、目の前にローランの鋭い顔があった。 「承知しました」 「俺は例の採掘場へ向かう。アルフォンスに伝えたいことがあれば伝えるが」  まさか彼からそのような提案がされるとは思ってもいなかった。アルフォンスには一か月に一度手紙を書いているため、特にこれといって伝えたいことはなかった。
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