第二章

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 グロセ家で難なくこの魔法を使えるのは、父親のヴィンセントだけ。エミーリアは転移魔法の使用を禁じられている。それは、膨大な魔力量と関係しているのだ。詳しくはエミーリアも聞いてはいないが、とにかくヴィンセントからは口を酸っぱくして言われている。 「団長は、転移魔法も使えるのですね」 「ああ」  だから、魔法騎士団長なのだ。 「団長はいつ頃発たれますか?」 「あと二時間後だ」 「では、少々お待ちいただけますか?」  ローランは不思議そうに目を見開いた。 「一度、控えの間に下がらせてもらいます。すぐに戻ってきますので」  エミーリアらしくもなく、慌てたように執務室を飛び出すと、控えの間の自席に置いてあった瓶を手にして、すぐに執務室へと戻る。  トンと手にしていた瓶を彼の机の上に置いた。透明な瓶の中には、紙で包まれた小さなものがたくさん入っている。 「転移魔法は魔力と体力をかなり消費します。よろしければどうぞ。以前よりも少しだけ美味しくなった不味い飴です」  ローランが真っすぐに見つめてくる。 「これは回復薬なのか?」 「疲れをとる、ちょっとだけ不味い飴です。以前と同じように柔らかいです」
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