第二章

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「君は、その茶葉が好きなのか?」 「団長が苦手でいらっしゃるようですから」  そう口にすると、ローランはバツの悪そうな顔をした。 「その他に、緑色の缶も持っていってくれ。あれは渋みが強くて好みではない」 「わかりました」  エミーリアは再び隣室へと向かい、追加で緑色の缶を手にする。飲まれないお茶が、救われた。 「では、一度下がらせていただきます。もし、準備等で必要なときは、お呼びください」  執務室を出ようとしたエミーリアであるが、両手がお茶の缶で塞がっているため、扉を開けられない。  背後から鼻で笑うような声が聞こえた。 「ほら。一つ寄越せ。隣まで持っていこう」  後ろから手が伸びてきて、エミーリアの手の中にあった黒色の缶をひょいと奪い去った。 「団長のお手を煩わせてしまい、申し訳ございません」 「謝るなと言ったはずだ」 「あ、はい。すみません……」 「言い方がかわっただけだ。謝っていることに違いはないだろう。こういうときは礼を口にしてもらったほうが、俺としては嬉しいのだが?」  礼と言われて、はっとする。エミーリアは、その言葉をあまり口にしない。 「ありがとう、ございます……」
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