7 好色政治家 梓源一郎の尻尾を掴め

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7 好色政治家 梓源一郎の尻尾を掴め

 階下で志桜里と話していた梓が、上階の物音に目を光らせた。  即座に志桜里は妖艶に微笑んだ。 「梓おじ様の使用人は、優秀なのでしょう? おじ様が行かなくてもよろしいのでは? それより今は、お話を聞かせてくださいな。私、大学一年生で、今年からボランティア部に入っているので、おじ様の慈善事業にとても興味がありますの。それともおじ様は、私との話は退屈かしら?」  座っているソファの隣をポンポンと叩いて、立ち上がった梓に、自分の隣へ座るよう誘う。  短めスカートからスラリと伸びた足を見せつけ、大げさに組み換えて、梓の気を引くことも忘れない。 「さぁ、おじ様。こちらにお座りになって。おじ様のボランティア支援動画、このPC画面で一緒に見ながら説明してくださいませんか?」  梓はゴクリと唾を飲み込んだ。  どうやらこの状況を気に入ったようだ。 「おじ様、私、お話を聞くのにいいものを持ってきましたの。長くなりそうなので、リラックスしながらお話できないかと思って。おじ様とゆっくりお話しするの、とても楽しみにしてきましたのよ」  そう言って、手早く用意したのはアロマグッズ。 「これでもっと仲良くなれましてよ。私たち」   アロマポットにオイルを垂らし、キャンドルを灯す。  辺りにオリエンタルな香りが広がり、鼻孔をくすぐった。  「仲良く? 仕方のないお嬢さんじゃなぁ。志桜里さんは、こんなおじいちゃんを誂うなんて」  言われるがままに隣に座り、わざとらしく志桜里の生足に手を置く。 「いけないおじ様。お仕置きしますよ」  殊更に妖艶に志桜里が微笑み、梓の耳元で囁く。  梓は志桜里組み敷く、という当人にとって幸せな夢を見ながら、ソファに崩れ落ちた。 「ふぅ、間一髪。ったくこのエロ爺、気持ちの悪いことこの上ないわね。睡眠誘発アロマの即効性をもう少し高めないと危ないとこだったわ。大学に戻って研究の再考が必要ね」    ブツブツ言いながら志桜里は、梓のPCから必要なデータを抜き出す。  難なくパスワードも解除し、疑わしい全てのデータを、持ってきたUSBに収める。 「証拠はすべていただきました。あなたもこれでお終いね。女を無力だと思って舐めないことね。地獄に落ちろ」  志桜里は、素早く持参した結束バンドで梓源一郎の手足を縛った。  大学一年生とは言いながら、彼女自身も常人を逸しているようだった。
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