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9 茶屋(かふぇ)八(はっち)でのんびりと
翌朝、梓のおぞましき数々の悪行が紙面を飾った。
何者かが梓の小児愛、人身売買、献金、脱税などあらゆる証拠データや画像・音声データを証拠品として新聞社に持ち込んだと伝えられていた。
また、梓の悪行に加担する足利の悪事も詳らかにされた。
「寄付と引き換えに、未成年者を手中に収めて多額の闇金を作った行為は善意とは程遠い脅しであり、性や自由意志の搾取としか言いようがない、ってさ」
茶屋八で朝刊の記事を音読した犬江仁が嬉しそうに声を上げる。
「大物政治家だからと言って忖度しなかったんだね」
「忖度しない記者を選んで渡したからな」
信乃の言葉に、記者の名前を見て読み上げた。
「犬村 礼儀」
テレビでも梓のニュースでもちきりだった。
アナウンサーの犬川 壮介が政治家を糾弾している。
自室で新聞を広げ、ニュースを見ていた里見市長は、笑みを浮かべている。
点滅していた「孝」、「仁」二つの水晶の点滅は収まり、透き通った青色に変わっている。
次に点滅しているのは「義」と「礼」だった。
「この調子で八つ、順調に集まると良いのだがな。まぁ、犬士たちが集まるには、何かしらの事件が絡むから厄介なのだけれどね」
そう言って、里見市長は黒く静まり返っている「智」、「忠」、「梯」、「信」の4つの水晶玉に手を添えた。
八犬士の伝説が蘇るには、まだしばらく時間がかかりそうだった。
〈了〉
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