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1. 余命一日
最近は食事も取れず、起き上がることはおろか自発呼吸もできない。意識も散漫で、両親が声をかけてくれても何を言っているのか理解ができない。私はほとんど夢の中にいる。
見飽きた病室の天井を見ているよりも、目を閉じて夢の中にいる方がいい。緩和ケアのお陰で痛みは抑えられているものの、数日前からたまに堪えようのないほどの激痛が立ちのぼる。身体が死に近づいているのだろう。
痛みの中で死ぬのか、夢を見ながら死ぬのか……
どのように死ぬのかはわからないけど、あと三日もしないうちにその答えを知ることは確かだ。
最近は夢の中で話し相手ができて、その人とのお喋りを楽しんでいる。聞き上手なその人は、特技もない平凡な女子大生の半生なんて面白くもない話を、熱心とも言える姿勢で最後まで耳を傾けてくれた。
自分語りって気持ちがいいもんなんだね。半生を語るなんて初めてのことだった。
私もお礼にとその人の話を聞こうとしたけど、何度頼んでも話してくれない。
話を聞く以外でも何かしてあげられることはないかな?
「それならば助けて欲しい」
「私にもできること?」
「誰にでもできることだが、私は梨沙を気に入ったから、梨沙に頼みたい」
「私でもできることならいいよ」
「……ありがとう」
それから声は聞こえなくなった。
どこかへ行ってしまったのかな?
なんて、夢なんだから誰かがいるわけじゃない。誰も姿は見えないし、この夢の中は真っ白で何もない。
誰かに自分の半生を話して聞かせるというのは、死ぬ前に見る走馬灯の代わりなのだろう。走馬灯って見るものじゃなく語るものだったんだ。そう知ったからには誰かに伝えたいな……でも現実ではもう喋ることも文字で伝えることもできない……あぁっ! また痛みが──今回は凄まじい──今までにないほどの……!
──あれ? 痛みが消えた。
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