32. 将来設計

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 そう慰めたが、エドワードは帯同できなかったことを悔やんでいるのか、表情を強張らせたまま考え込んでいる様子だった。  少しして、着替えをするというので私は隣の自室へ向かった。  悔やんでもどうしようもないだろうに。出発前に目覚めていても連れて行ってもらえなかっただろう。  エドワードはこれからどうするんだろうか? ピーターのせいで影の騎士としては活動できなくなってしまった。もう身を隠す必要はなくなったとはいえ、ホームレスであることは変わらない。それなのに人助けもできないし、王女の側にもいることもできない。山奥にでも引きこもってしまうのだろうか? そんなの嫌だな。  というか、私もどうすればいいんだろう? これまではマディソン夫人と王女に甘えていたけど、甘え続けるわけにはいかない。何か自活の道を見つけなくては──そうだ! エドワードと二人で生きていけばいい!  エドワードと結婚すればいいんだ。仕事を見つけて、エドワードを養えばいい。二人で商売を始めるのもありだ。エドワードとなら生きていける。暮らすのに困らない程度にならやっていける気がする。  着替えが済んだ頃を見計らってエドワードの部屋へ戻り、思いついたことを話した。つまりはプロポーズだ。 「ええっ? つまり、私と梨沙が……」 「うん。結婚しよう」 「結婚?」  エドワードは驚いて後退り、壁にぶつかってもまだ、めり込むほど後ろに下がった。 「そんなに嫌なの?」  ちょっと傷ついたぞ。  エドワードは思いっきり首を横に振る。 「いえ、あの、その……私なんかが梨沙と結婚だなんて、その……」 「どういう意味なの? 嫌だったら諦めるしかないけど、私はエドワードと死ぬまで一緒にいたい」  エドワードの顔は真っ赤になり、俯いて、しばらくそのまま黙っていたが、顔をあげると意を決した様子でこちらへ近づいてきた。 「嬉しいです」 「よかった」 「ですが、私は家もなくお金もないですし……」エドワードは再び俯く。
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