1. 余命一日

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 白い世界……ここは夢の中だ。あの人と喋っていたところ。 「梨沙……迎えに来た」  あの人の声だ。また会えた。 「どこかへ行くの?」 「助けてくれるのだろう? こちらに来て欲しい」  こちら? どこかへ移動するの? 「助けるよ。どこにでも行くよ」 「……ありがとう。もうここへは戻れないが、それでも大丈夫か?」  私は可笑しくなった。 「しつこいな。どこでも同じだよ」  その人も笑った。 「わかった。では行こう」  一瞬の後、見えたもので私は仰天した。現実のような世界が目の前に現れたのだ。  真っ青な天井、視界の端には木の葉がそよいで──外だ!  私は草むらに仰向けで寝ていたようで、身体を起こすと草の感触があった。  遠目に建物が見えているし、それ以外は草原と森と崖がある。青空を見上げていても眩しくなかったのは、その崖が太陽を隠していたからのようだ。 「梨沙、身体は大丈夫か? 病気は治癒しておいたが……」  えっ?  私は深呼吸をして腕をぐるぐると回してみる。  立ち上がってジャンプもしてみた。 「大丈夫。……でも夢の中でしょ?」 「梨沙は覚醒している。眠ってはいない」 「えっ? どういうこと?」 「梨沙の元いた世界から身体ごとここへ連れてきた。ここは、そことは違う世界だ」  ええーー? つまり異世界に来たってこと? 漫画やラノベみたいなことが本当にあるの? 「こちらへ連れてきたのは、頼みたいことがあるからだ」 「そう言ってたね。なに?」 「……納得できたのか?」 「なにが? あっ! 病気を治してくれてありがとう。そのお礼もしなきゃだね。なんでもやるよ!」 「……もっと驚いたり戸惑ったりするのかと思っていたが」 「もちろん驚いたよ。……それで? 何をすればいいの?」
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