第18話 織姫、ドラゴンの首を獲る

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第18話 織姫、ドラゴンの首を獲る

■奥多摩 大岳ダンジョン 49階層  安全地帯(セーフエリア)である10階層刻み一層前には強力なボスがいる。  ダンジョンでステータスがあることもそうだが、このボスと安全地帯の作りはさらにダンジョンをゲーム化していた。  だが、油断していたものは屍になって消えている。  ここはゲームの世界ではなく、まごうことなき現実世界(リアル)だからだ。 「グガァァァァ!」  大きな口を開けて、ドラゴンが〈炎の吐息〉を放ってくる。  高温すぎて、岩場すら溶けて結晶化するほどだ。 「ふ~む、ドラゴンは知能のあるものだと聞いているけど、ここにいるのは知能がないようだねぇ~」 「トーコ先生はもっと離れててください! 巻き込まれますよっ!」  織香が叫ぶとトーコ先生は少しだけ離れて、ドラゴンと戦う俺達を観察し始める。  研究者の(さが)というものか、危ないところだろうと興味のあることに対しては頭のねじが外れるのだ。 『サグル! 大丈夫か?』 「ドローンもなるべく離しておけ、巻き添え食らって壊れても俺は知らん!」 :スコップ師匠、マジかっこいい :配信再開したら、なんかみんなさっぱりしているけど何があったんだ? :どこかのセーフエリアに温泉があるらしい :天然温泉Dの湯w :だれうまw :だれうまw :セーフエリアだから、店を作ればワンチャンあるか? :資材を持っていく段階でアウトだな。〈収納〉スキルもLv1だとそんなに容量大きくないらしいしな。 :”1000万$の女”トーコ先生を”1億$の女”にレベルアップさせるしかw :どんな富豪だよw :無理ゲー :スコップ師匠なら、やれる! :無理ゲーとは……限らないな!  チャット欄がいつも以上に盛り上がっている中、俺は織香にドラゴンを倒させようと調整しながら戦っている。  ステータスポイントと呼ばれるSPはモンスターに止めを刺したものが多く得られるようになっていて、パーティプレイをしているときは誰が止めを刺すかを調整するのが普通だとイカルが教えてくれた。 「織香! お前の〈潜在能力:超振動〉(ユニークスキル:ハイブレイカー)なら、ドラゴンの鱗の内部にダメージを与えられるはずだ。攻撃は俺が防ぐから一番効く部分を探せ!」 「グギャラァァァァ!」  ドラゴンが尻尾で俺達を薙ぎ払おうとするが、俺は両手で尻尾を受け止めた。  足を踏み込んで、衝撃を消す。   「グガ?」 :ドラゴンがきょとんとしているのはじめてみたw :コイツ、喋れないだけで知能高くないか? :スコップ師匠に出会わなければ……。 「デヤァァァ! 天織流 奥義・織星崩(おりぼしくだ)し!」  ドラゴンを俺が食い止めている間に織香が飛び上がってドラゴンの全身に連続打撃を加えていった。  だが、ドラゴンの装甲車よりも固いとされている鱗には効いていない。 「織香!」 「今のは力の流れを見ただけです、天織流の神髄は柔と剛、力の流れをとらえて攻める技です!」  織香は連続打撃を与えた中で、手ごたえが違った首元に狙いを定めた。 「天織流 拳技・匕首徹(あいくちとお)し!」  拳から手刀のように指を伸ばした形をとった織香は首元を〈潜在能力:超振動〉(ユニークスキル:ハイブレイカー)を使いつつ貫く。  超振動ブレードのようになった織香の手刀がドラゴンの首の奥深くまで刺さり、その後織香が腕を払えばドラゴンの首が飛んだ。 :織姫ちゃん、すげぇ吹っ切れたような動き! :本当にスコップ師匠との間に何があったんだ :ダンジョンの中で男女がテントに、何も起きないはずがなく…… イカル:なーんもなかったよー。人生相談されて答えてたって話だよん :そうか…… :そうなんだ……   コメントを眺めてくれているイカルが話題が変な方向になるところをしっかり制御してくれるので、助かる。 「お、スキルカードが出て来たな……やったじゃないか、これは倒した織香のものだ」 「ありがとうございます! スキルカードの【竜の尾】ゲットしました! あとで詳細を調べたいと思います」 「そうだな、先に安全地帯へ急ごう」 「おぉ~い、私を置いていかないでぇ~」  スタスタと歩いていく俺達の後ろをヨタヨタとトーコ先生が追いかけてくる。  トーコ先生の強化もしていかないと、一緒に行動するのも難しくなるな……。  俺は新しい課題に対して、イカルと相談しようと心に決めた。  今の俺には頼れる仲間がいるのだから、一人で悩まずに行ける。  そんな状態がとても心地よく思えるようになってきた。  
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