第24話 異界言語

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第24話 異界言語

■奥多摩 大岳ダンジョン 79階層  〈異界言語Lv1〉のスキルを得た俺はどうしたものかと思いつつも、79階層まで潜ってきた。  ただ、魚人達の言葉は理解できるようになっていて、「コロス! コロス!」とだけ叫んでいる。 「問題はもっと知能が高い敵の場合は交渉ができるか、どうかなんだよな……」  魚人を倒しながら到着した79階層のボス部屋は重く閉じられているが、それ以上に俺は〈異界言語Lv1〉がどういう影響を与えるのかが不安に近い思いを抱いていた。 「大丈夫です。私も視聴者のみんなもついています」  俺の不安を察知した織香が手を握ってくる。  握り返した俺は織香と一緒に扉を押して開いた。  ゴゴゴゴという音と共に開き、大きな灯篭が四隅に立っている祭壇が見える。   「祭壇だな……」 「祭壇だねぇ~」 「祭壇ですね」  俺達は目に見えるものを口に出しながら部屋に入った。  すると背後の扉が閉まり、さらに部屋の壁にも炎が灯り、部屋が明るくなる。  言いようのない不安感が俺を襲い、思わずつばを飲み込んだ。 『イケニエ! キタ! 神ニササグ!』  大きな声が聞こえ、俺がはスコップを構えて織香とトーコ先生を守るように立つ。  3mはあろうか大きな魚人が祭壇の上から俺達を見下ろしていた。  ガンガンと銛を地面に叩きつけると、ズシンズシンと地面が揺れる音と振動がして部屋の奥から二足歩行で立つ、10m級の赤い色をした亀が姿を見せる。 「あれは~アダマントタートルだ、そうだよ~」 「アダマントって……まさかっ!?」 「ドロップアイテムはアダマンタイトだね~」 :アダマンタイト!? :本当に見つかるんだ :でもボスドロップっぽいぞ? :79階層って無理ゲーやん  トーコ先生の言葉に織香やチャット欄が盛り上がった。 「アダマンタイトってそんなにすごいのか?」 「ファンタジー系RPGじゃ、おなじみのレア金属ですよ。ダイアモンドクラスの固さっていわれています」 「なら、手に入れて丈夫なスコップが欲しいな……」  俺が持つスコップはだいぶひしゃげていて、そろそろお陀仏になりそうである。  よく持ってくれたともいえるが、本当に感謝しかない。   「私もナックルガードとブーツを新しくしたいですね」 「二人とも~援護はするから頑張るんだよ~」  トーコ先生の応援を受けて、俺と織香はアダマントタートルに向かった。 『グギャァオォォ!』  怪獣様な鳴き声を上げたアダマントタートルは何かを吐き出そうとするも、その口はトーコ先生の放った〈粘液糸〉で閉じられる。  トーコ先生もダンジョン経験が浅かったが79階層まで潜れれば十二分に戦闘できるほど強くなっていた。  ステータスのINTは知力でもあるとと共に精神的な強さも兼ねているのかタフになっている。 「俺は〈強酸液〉で責める。弱ったところと叩け!」 「はいっ!」  俺達が足元に近づいたのを確認したアダマントタートルは地団太を踏んで踏みつぶそうとしてきた。  巨大な足が落ちて神殿の床にぶつかる度に、地面が揺れ地震のようなものが起きる。  バランスを崩しかけるのを何とか戻して、足の膝や腱のあたりを狙って〈強酸液〉をかけた。  ジュワァァという音と共に白い煙が上がるもアダマントタートルは動きを変えない。 「でも、確実に肉を削っているならこれはどうですか!」  いくら固い金属の肌をもっていようとも、酸で溶けるし、高周波振動を起こす織香の〈潜在能力:超振動〉を防ぐことはできなかった。  肉が溶けた腱に手を当てて振動を与えると自重を支えられなくなりグチャアと足が潰れる。 『グギュグググ』  口がふさがれているため、叫ぶことのできない亀が腹を上に向けて転がったので俺達は止めの動きに出る。  しかし、亀は両手両足を甲羅の中に引込めたかと思うとグルグルとその場で回りだしたのだ。  回転が速くなり、大きな風が巻き起こる。  俺は織香の手を掴むと〈粘液糸〉を飛ばして、トーコ先生の近くへと降り立つ。 「風を起こした先は……」 「まぁ、つっこんでくるよねぇ~」  竜巻を起こしている亀がそのまま俺達の方へ迫ってきた。  砕けた床の材料が竜巻に吸い込まれて砕けるのが見える。  巻き込まれたらただじゃすまないのは明らかだった。
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